都市の研究
〜NY、都市の捉え方、これから〜

発表日:平成13年6月27日
担当者:市川純子
1. ニューヨーク、マンハッタンという都市 『錯乱のニューヨーク』

ニューヨークの中心を成しているのはマンハッタン。
市政を開始した1626年……ニューヨーク市はマンハッタンのみ。


マンハッタンの面積=58平方キロメートル

マンハッタンは文化的・都市構造的に稠密度が高い。
(国際政治、世界経済(ウォール街)、ゲイ・ポリティクス、スラム街、エスニック・コミュニティー)

1609 マンハッタン島発見
1626 マンハッタン島買い取り("インディアン"より$24で)



オランダ人のマンハッタン作り
母国が人工国→マンハッタンの都市設計は母国の延長であるかのごとく構成。


ヨーロッパ人の考え

ニューアムステルダムにユートピアとしてのヨーロッパを持ち込む・  島の構成はすべてヨーロッパのもの。しかしヨーロッパのコンテクストから切り離されて、新しい全体を作り上げる。
……マンハッタンは凝縮と過密の産物



マンハッタンは様々な先例的要素のカタログ。
(旧大陸に存在する望ましき要素が一箇所に 集められている。)



マンハッタンのデザインの基礎=グリッド(格子)、2028個のブロック

ブロックはどれも同じで等質性があり、グリッドのおかげでマンハッタンの建築家は各ブロックを相互に明確に区別するための戦略を発明せねばならなくなった。



マンハッタンは現代文化の基礎となる過密の文化を生み出した。

どこの都市よりも先端的な条件が揃っていた。(植民地を背景とする人口の地、機械テクノロジーの爆発的発展、経済的自由競争体制、民意主導型の政治体制)



過密の文化とは・・・  

メトロポリスにおける革命的な生活様式の実験。
最大限の経済性、利益、効率、速度、利便、娯楽、生活における体験の多様性を同時に追求することにより、矛盾を孕んだ高密度状態。
これを支えるのはその矛盾を孕んだ欲望。


まとめ>>>  

 マンハッタンとは人間の欲望が生み出したもの。欲望追求の舞台となった場所であり、 人間の欲望の追求の過程であり、結果である。
 マンハッタンとは欲望にまみれてこの地にやって来たヨーロッパ人が歴史のない場所で、 虚構(フィクション)として作り上げてしまった錯乱体である。



著者レム・コールハウス(Lem Koolhaas)について

1944年、オランダ生まれ。建築家。過去に新聞記者、脚本家となる。
「本質的に都市はナンセンスで、独断的で見せかけであり、それを誇るべきである。」


2.都市とは何か

 都市は19世紀以来、実に多くの学者によって定義されてきた。

  • 都市は人類の歴史とともに古い、ある種の社会技術と言ってよい発明品。

  • 都市は建築と空間の調和。 ・都市とは城壁に囲まれた村落。(マウラー)

  • 都市とは経済学的にそこの住民が工業的・商業的な営利からの収入で生活する定住地。(マックス・ウェーバー)

  • 都市とはある種の心の状態であり、習慣や伝統とともに受け継がれていく態度や感情の集合。(パーク)

  • 都市とは一部の支配者と大多数の被支配者で形成されるというシステム。

西洋ではポリス、日本では平安京・平城京――大多数の奴隷・兵士等の存在

  • 都市とは自立した一定のエリア。そのエリア内において政治・経済・文化・スポーツ・生活全般にわたり、そのほとんどを充足させることのできる機能を備えている人口の集中した地域。

  • 都市とは経済投資の場、働く場、生活の場。

  • 都市とは人が多く集まり、政治・経済・文化の中心になっているところ。

  • 都市は農村と対置され、非農業人口からなる大量の人口が過密度に集中し、居住する地域。 ・都市とは社会的に異質な諸個人の、相対的に大きい、密度のある永続的な集落


「city」と「urban」
  • city

    語源・・・ラテン語civitas(キヴィタス)→市民、国民、公民、政府の意味を含む。
    現在の英語citizenに通じる。
    cityは人々の集合であり、特定の集団そのものを指す。

  • urban


    語源・・・ラテン語urbs(ウルブス)→物理的空間としての意味を持つ。
    Urbanは周辺に対しておおきな人口・密度を持った空間を指す。

→現在、都市の概念はcityもurbanも混同されている。


まとめ>>>

 都市の定義は明確には困難である。歴史的にみても時によって捉え方は様々で都市の本質を明らかにしようと多くの学者が努力を重ねてきた。しかし答えは出ないどころか、ますます深みにはまる一方である。都市を絶対的なポイントから捉えることは不可能である。

 

3.これから

 都市は特定の視点からの原理を持つものではない。様々な要素から成り立っているものであり、いろいろな角度から都市に迫ることが可能である。都市を論じるときの共通点は、その論じる対象が都市であるということだ。
 都市は多様な側面を持ち、いろいろな方法と視点からアプローチできる。

 私は都市の基本は人であると考えたい。人がいなければ、都市は発生しない。私興味は人種や民族の問題を含むから、都市と人のつながりという面から都市に迫っていきたい。
  浮動人口層、移民など。

 


参考文献
レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』、ちくま学芸文庫